脱毛広告の景表法チェックポイントは?料金表示・打消し表示・ステマ規制

脱毛広告で景品表示法(景表法)上の問題になりやすいのは、施術の効果よりもまず「料金・回数・期間」の見せ方です。特に、①比較対照価格の根拠があいまいな二重価格表示、②条件を小さな注記で補う打消し表示、③2023年10月から不当表示に指定されたステルスマーケティング(ステマ)——この3点が中心的な論点になります。本記事は消費者庁が公表している考え方をもとにした一般的な整理であり、個別の表現の最終判断は専門家への確認をおすすめします。
- 脱毛広告が景表法でつまずきやすい構造的な理由
- 二重価格・打消し表示・ステマで問題になりやすい具体パターン
- 公開前に確認したい「料金まわり」チェック7項目
01なぜ脱毛広告は景表法でつまずきやすいのか?
脱毛は、美容メニューの中でも料金の設計がとりわけ複雑な施術です。初回体験の価格、部位ごとの単価、回数コース、月額制、通い放題——同じ店舗の中に複数の料金体系が並び、そこへ有効期間・対象部位・予約条件が重なります。
条件が多いほど、広告の限られたスペースからは条件のほうが省かれ、残るのは目を引く価格だけになります。こうして「実際よりも有利に見える表示」が悪意なく生まれてしまうのが、脱毛広告のつまずきやすさの正体です。
景表法が規制する不当表示は、大きく2種類あります。品質や内容を実際より著しく良く見せる優良誤認と、価格や取引条件を実際より著しく有利に見せる有利誤認です。脱毛広告で繰り返し指摘されてきたのは、圧倒的に後者。消費者庁は、脱毛・エステの施術サービスの金額表示について有利誤認にあたるとして、事業者に措置命令を行った事例を公表しています。
02二重価格表示——「通常価格◯円→今だけ◯円」の3つの落とし穴
二重価格表示とは、実際の販売価格に、比較対照となる別の価格(過去の販売価格、他社の価格など)を並べて見せる表示のことです。それ自体が禁じられているわけではなく、比較対照価格の中身が正確に伝わらないときに問題になります。
消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」では、過去の販売価格を比較対照に用いる場合について、同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格とはいえない価格を用いるときは、いつの時点でどの程度の期間販売されていた価格かを正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあるとされています。脱毛広告に当てはめると、次の3パターンが典型です。
| よくある表示 | 問題になりやすい理由 | 整え方の方向性(一例) |
|---|---|---|
| 「通常価格◯◯円→半額」だが、その通常価格での提供実績がほとんどない | 比較対照価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」といえないおそれ | 実際に提供していた価格と期間を記録として残す。示せないなら比較表示自体をやめる |
| 「期間限定」のキャンペーン価格を、期間の終了後もそのまま出し続けている | 実際には常時提供している価格を、限られた期間だけの有利な条件に見せることになる | 開始日と終了日を明示し、終了時に表示を差し替える運用手順を先に決めておく |
| 「他社の半額」「相場より安い」など、比較の相手があいまい | 比較対象・時点・調査方法が示されないと、実際と異なる表示やあいまいな表示と判断されるおそれ | 比較対象と調査時点・調査方法まで示せる場合に限る。示せないなら書かない |
※整え方は方向性の一例です。表示の可否は広告全体の印象もあわせて判断されるとされています。
同じ考え方は、価格以外の「強い一言」にも当てはまります。「業界最安」「地域No.1」のような最上級の表現は、客観的な調査などの合理的な根拠が前提とされています。根拠資料を用意できないなら、書かないのが最も安全です。

03打消し表示——小さな注記で条件を補うやり方の限界
「※初回のみ」「※他コースとの併用不可」「※2回目以降は別料金」——脱毛広告では、目を引く本体のコピーを小さな注記で補う書き方が定番です。この注記が打消し表示です。
消費者庁は「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」(2018年)で実態調査の結果をまとめており、文字が小さい、本体表示から離れている、スクロールしないと視界に入らないといった打消し表示は、消費者に認識されず、本体表示だけが理解されてしまうおそれがあると整理されています。体験談を用いる場合の打消し表示についても、留意点が示されています。
つまり注記は「書いておけば免責される欄」ではなく、読まれてはじめて意味を持つ表示です。判断は次の順番で進めます。
- まず、条件を本体表示に組み込めないか考える——「初回1回」「両ワキ・6回」のように、条件込みの言葉にしてしまうのが最も強い解決です。
- 組み込めないなら、同じ画面・同じ視線の流れで読める位置と大きさに置く——本体の近くに、読める文字サイズで。
- それでも伝わらないなら、訴求そのものを変える——注記なしで成立しない訴求は、表示に無理がある可能性があります。

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Q1 / 3
Googleビジネスプロフィールに、最新のメニューと料金を載せている
ホームページに「よくある質問(FAQ)」のページがある
Googleの口コミに、定期的に返信している
04ステマ規制——口コミの「お願い」はどこから危ないのか
2023年10月1日から、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が景表法の不当表示に指定されました(令和5年内閣府告示)。いわゆるステマ規制です。脱毛サロンで関係してくるのは、主に口コミとSNSです。
問題になりやすいのは、たとえば次のような形です。
- お客様やスタッフに依頼して、サロンの関与を伏せたまま一般の利用者を装って投稿してもらう
- インフルエンサーへの依頼投稿で、広告・PRであることの表示がない
- 高評価を条件に割引や特典を渡し、投稿内容まで指定する
ここでの判断軸は「依頼したかどうか」ではなく、読んだ人が事業者の表示だと分かるかどうかです。口コミのお願い自体が直ちに規制対象になるわけではありません。内容を指定せず、評価と引き換えの特典を渡さず、依頼したことが分かる形にしておく——この3つを守れば、通常の声かけは続けられます。具体的な集め方は「サロンのGoogle口コミの増やし方」で解説しています。
05公開前チェック——脱毛広告の「料金まわり」7項目
ここまでの論点を、公開前に通す手順としてまとめます。ホームページ・LP・チラシ・店内POP・SNS投稿など、お客様の目に触れる表示物すべてが対象です。
- 総額が分かるか
1回・1部位の価格だけを大きく出し、コース総額が読み取れない状態になっていないかを確認します。 - 回数と有効期間の上限が書かれているか
「通い放題」なら、期間・対象部位・予約できる間隔まで含めて表示します。 - 適用条件が明示されているか
初回限定・新規のみ・年齢・他コースとの併用可否など、価格が適用される前提を並記します。 - 追加でかかる費用を出しているか
シェービング代・キャンセル料・延長料金など、別途発生し得る費用の有無を明記します。 - 解約・返金の条件が確認できるか
中途解約時の精算方法を、契約前に読める場所に置きます。 - 比較対照価格に根拠があるか
いつ・どのくらいの期間その価格で提供していたのかを、資料として説明できる状態にします。 - 注記が本体表示と同じ画面で読めるか
文字サイズ・位置・スマートフォンでの見え方を、実機で確認します。
なお、2024年10月1日に施行された改正景表法では、事業者が自主的な是正計画の認定を受けることで措置命令等を回避できる確約手続が導入されたほか、特に悪質な優良誤認・有利誤認について、措置命令を経ずに罰則を科す直罰規定(100万円以下の罰金)が新設されました。表示を「作ってから直す」のではなく、作る前にルールを決めておく体制の重要性は高まっています。
そしてこの整備は、法令対応だけの話ではありません。ChatGPTやGoogleのAI検索は、公式サイトや口コミなどの公開情報を組み合わせて答えを作ります。料金・回数・期間・条件が正確に書かれたページは、AIがそのまま引用できる情報の単位になります。逆に、条件が画像の中や小さな注記にしか書かれていないページは読み取られず、比較の候補に上がりにくくなります。景表法に配慮して条件を正確に書くことは、AI検索に選ばれるための土台づくり(AEO)とそのまま重なります。全体像は「美容サロンのAEO対策 完全ガイド」にまとめています。
※本記事は2026年7月時点で公表されている一般的な情報の整理です。個別の表現が法令に適合するかどうかの判断は、広告法務に詳しい専門家にご確認ください。
FAQよくある質問
Q.「初回1回100円」のような表示は、脱毛広告では使えないのですか?
一律に禁止されているわけではありません。景表法で問題になりやすいのは、その価格が適用される条件(対象部位、初回のみか、回数、有効期間、2回目以降の料金、併用の可否など)が、価格表示と同じ場所で読み取れないケースです。条件が多くて書ききれない場合は、注記を増やすのではなく、打ち出す条件そのものを絞ることを検討してください。
Q.「通い放題」「回数無制限」と書いてもいいですか?
実態と一致していれば表示自体が直ちに問題になるわけではありませんが、実際には有効期間・対象部位・予約できる間隔・退会条件などの制限があることが多く、その制限を小さな注記だけで補うと、取引条件を実際より有利に見せる表示と判断されるおそれがあります。制限がある場合は、制限を含めた形の言葉に本体表示を変えるのが安全な方向です。
Q.お客様に口コミの投稿をお願いすると、ステマ規制に違反しますか?
投稿をお願いすること自体が直ちに規制対象になるわけではありません。2023年10月から不当表示に指定されたのは、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示です。投稿内容を指定する、評価を条件に割引を渡す、事業者の関与を伏せて第三者の感想のように見せる、といった形になると規制の対象となるおそれがあります。依頼する場合は、内容を指定せず、事業者の関与が分かる形にすることが基本です。
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